近年、働く人々の労働環境や待遇に対する注目が高まっており、そのなかでも「ブラック企業大賞」という言葉が頻繁に取り沙汰されています。このブログでは、ブラック企業大賞の概要や目的、そして過去の受賞企業や労働環境改善への取り組みについて詳しく解説していきたいと思います。是非参考にして、自分が働く企業や選ぶ企業を選ぶ際の判断材料の一つにしていただければ幸いです。
ブラック企業大賞とは

ブラック企業大賞は、毎年12月に開催されるイベントです。このイベントは、大学教授、ルポライター、弁護士などで構成される「ブラック企業大賞企画委員会」によって行われています。この企画委員会は、ブラック企業を定義し、ノミネートする役割を担っています。
ブラック企業大賞の目的は、誰もが快適に働ける環境を作り上げることです。そのため、不祥事や問題行動を起こした企業を対象にし、具体的な事例だけでなく、それらの背景や社会構造の問題を多くの人に広めることを目指しています。
ノミネートされる企業は、大手有名企業から中小企業まで様々です。長時間労働、セクハラ・パワハラ、いじめ、低賃金など、さまざまな基準が存在します。
ブラック企業大賞は、社会的な問題を浮き彫りにし、労働環境の改善に向けた取り組みを促す役割を果たしています。具体的な選考方法や受賞までの流れは公表されていますが、基本的に受賞式にはノミネートされた企業は参加していません。
ブラック企業大賞は、転職活動や就活において、胡散臭い企業を避ける参考情報として利用されることがあります。ただし、ノミネートされる企業が現在も必ずしもブラックな状態であるとは限らないため、注意が必要です。
ブラック企業の定義と指標

ブラック企業を明確に定義するために、ブラック企業大賞では以下の2点を基準にしています。
労働法違反およびグレーゾーンな条件
労働法やその他の法令に抵触し、またはその可能性があるグレーゾーンな条件で労働を意図的かつ恣意的に従業員に強いている企業を、ブラック企業と定義しています。
暴力的強制やパワーハラスメント
ブラック企業大賞の定義には、パワーハラスメントなどの暴力的な強制行為を常套手段として従業員に強いている企業や法人も含まれます。
ブラック企業を見極めるための指標には、以下の項目があります:
- 長時間労働
- セクハラ・パワハラ
- いじめ
- 長時間過密労働
- 低賃金
- コンプライアンス違反
- 育休・産休などの制度の不備
- 労組への敵対度
- 派遣差別
- 派遣依存度
- 残業代未払い(求人票でウソ)
これらの指標を総合的に判断することで、多くのブラック企業は複合的に問題を抱えていることがわかります。
ブラック企業の定義や指標を明確化することで、社会的な問題としてのブラック企業を見極め、改善に向けた取り組みを進めることが目的です。ブラック企業大賞は、誰もが安心して働ける環境の実現を目指して活動しています。
ブラック企業大賞の目的

ブラック企業大賞は、以下の目的を持っています。
ブラック企業の問題を広く伝える
ブラック企業大賞では、個別のブラック企業の事例だけでなく、それらが生まれる背景や社会構造の問題も広く伝えることを目指しています。これによって、一つの企業にとどまらず、ブラック企業の存在や問題点を社会全体に認知させることができます。
安心して働ける環境の実現へ
ブラック企業は法律違反やパワーハラスメントなど、社員の健康や安全を脅かす行為を行う存在です。ブラック企業大賞は、このような企業を排除し、社会全体が安心して働ける環境を実現することを目指しています。
社会構造の問題の光を当てる
ブラック企業大賞は単に問題のある企業を非難するだけでなく、背後にある社会構造の問題にも光を当てることを目指しています。労働環境を改善し、健全な労働市場を形成するためには、ブラック企業の存在や問題を明らかにし、改善に向けた取り組みを行うことが重要です。ブラック企業大賞は、その一翼を担い、社会全体の意識向上や改善に寄与することを目指しています。
このように、ブラック企業大賞は単なるブラック企業の非難ではなく、より良い労働環境の実現を目指し、社会全体の認識を向上させるための重要な取り組みとなっています。
歴代受賞&ノミネート企業紹介(2012年~2019年)

2019年の受賞企業一覧
- ブラック企業大賞:三菱電機株式会社
- Web投票賞:楽天株式会社
- 特別賞:株式会社電通
- 特別賞:株式会社セブン-イレブン・ジャパン
- #MeToo賞:長崎市
2019年のブラック企業大賞は三菱電機株式会社が受賞しました。この受賞は、20代の男性社員が過労により自殺したことが主な要因です。また、Web投票賞には楽天株式会社が選ばれました。楽天は有名な企業であり、2019年にはパワハラ問題が発覚していたため、多くの支持を受けました。さらに、特別賞として株式会社電通と株式会社セブン-イレブン・ジャパンも選ばれました。さらに#MeToo賞は長崎市が受賞しました。
2019年のノミネート企業一覧
- KDDI株式会社
- 株式会社ロピア
- トヨタ自動車株式会社
- 吉本興業株式会社
2019年のノミネート企業として選ばれたのは、KDDI株式会社、株式会社ロピア、トヨタ自動車株式会社、吉本興業株式会社です。
2018年の受賞企業一覧
- ブラック企業大賞:三菱電機株式会社
- 特別賞:株式会社プラントサービス
- 市民投票賞:財務省
- 有給ちゃんと取らせましょう:株式会社ジャパンビバレッジ東京
2018年のブラック企業大賞は三菱電機株式会社が受賞しました。この受賞は、過労死が主な要因とされています。特別賞には株式会社プラントサービス、市民投票賞には財務省、そして有給ちゃんと取らせましょう賞には株式会社ジャパンビバレッジ東京が選ばれました。
2018年のノミネート企業一覧
- 株式会社ジャパンビジネスラボ
- 野村不動産株式会社
- スルガ銀行株式会社
- ゴンチャロフ製菓株式会社
- 株式会社モンテローザ
2018年のノミネート企業として選ばれたのは、株式会社ジャパンビジネスラボ、野村不動産株式会社、スルガ銀行株式会社、ゴンチャロフ製菓株式会社、株式会社モンテローザです。
2017年の受賞企業一覧
- ブラック企業大賞:株式会社引越社・株式会社引越社関東・株式会社引越社関西
- 特別賞:大成建設株式会社・三信建設株式会社
- 業界賞:新潟市民病院
- ブラック研修賞:ゼリア新薬工業株式会社
- ウェブ投票賞:日本放送協会(NHK)
2017年のブラック企業大賞には、株式会社引越社・株式会社引越社関東・株式会社引越社関西が選ばれました。この企業は通称「アリさんマークの引越社」として知られており、不当な配置転換や懲戒解雇処分を行っていたことが受賞の要因です。特別賞には大成建設株式会社と三信建設株式会社が選ばれ、業界賞には新潟市民病院が、ブラック研修賞にはゼリア新薬工業株式会社が、ウェブ投票賞には日本放送協会(NHK)が選ばれました。
2017年のノミネート企業一覧
- 株式会社いなげや
- パナソニック株式会社
- 大和ハウス工業株式会社
- ヤマト運輸株式会社
2017年のノミネート企業として選ばれたのは、株式会社いなげや、パナソニック株式会社、大和ハウス工業株式会社、ヤマト運輸株式会社です。
2016年の受賞企業一覧
- ブラック企業大賞:株式会社電通
- 業界賞:ディスグランデ介護株式会社
- 業界賞:株式会社プリントバック
- ブラックバイト賞:DWE JAPAN株式会社
- 特別賞:日本郵便株式会社
- Web投票賞:日本郵便株式会社
2016年のブラック企業大賞には株式会社電通が選ばれました。電通はパワハラや過労により多数の従業員が自殺に追い込まれたことが発覚し、受賞しました。業界賞にはディスグランデ介護株式会社と株式会社プリントバックが選ばれ、ブラックバイト賞にはDWE JAPAN株式会社が選ばれました。また、特別賞とWeb投票賞には日本郵便株式会社が受賞しました。
2016年のノミネート企業一覧
- 株式会社エイジス
- 株式会社ドン・キホーテ
- 関西電力株式会社
- 佐川急便株式会社
- サトレストランシステムズ株式会社
- 宗教法人仁和寺
2016年のノミネート企業として選ばれたのは、株式会社エイジス、株式会社ドン・キホーテ、関西電力株式会社、佐川急便株式会社、サトレストランシステムズ株式会社、宗教法人仁和寺です。
2015年の受賞企業一覧
- ブラック企業大賞:株式会社セブン-イレブン・ジャパン
- Web投票賞:株式会社引越社関東
- ブラックバイト賞:株式会社明光ネットワークジャパン
- 特別賞:暁産業株式会社
2015年のブラック企業大賞には株式会社セブン-イレブン・ジャパンが選ばれました。セブンイレブンジャパンは日本最大手のコンビニチェーン「セブンイレブン」を経営する企業ですが、加盟店主に対して値下げ販売を妨害したことが要因で大賞を受賞しました。Web投票賞には株式会社引越社関東が、ブラックバイト賞には株式会社明光ネットワークジャパンが選ばれました。また、特別賞は暁産業株式会社が受賞しました。
2015年のノミネート企業一覧
- 株式会社フジオフードシステム
- 株式会社エービーシー・マート
2015年のノミネート企業として選ばれたのは、株式会社フジオフードシステムと株式会社エービーシー・マートです。
2014年の受賞企業一覧
- ブラック企業大賞:株式会社ヤマダ電機
- Web投票賞:株式会社ヤマダ電機
- 業界賞:株式会社A1-Pictures
- 業界賞:株式会社不二ビューティ
- 特別賞:東京都議会
- 要努力賞:株式会社ゼンショーホールディングス
2014年のブラック企業大賞とWeb投票賞には株式会社ヤマダ電機が選ばれました。ヤマダ電機は大手家電量販店としても有名ですが、男性従業員を過労により自殺に追い込んだことが受賞の主な要因です。業界賞には株式会社A1-Picturesと株式会社不二ビューティが選ばれ、特別賞には東京都議会が、要努力賞には株式会社ゼンショーホールディングスが選ばれました。
2014年のノミネート企業一覧
- 株式会社大庄
- JR西日本
- タマホーム株式会社
- 株式会社秋田書店
- 学校法人・智香寺学園、正智深谷高等学校&株式会社イスト
- 株式会社リコー
2014年のノミネート企業として選ばれたのは、株式会社大庄、JR西日本、タマホーム株式会社、株式会社秋田書店、学校法人・智香寺学園、正智深谷高等学校&株式会社イスト、株式会社リコーです。
2013年の受賞企業一覧
- ブラック企業大賞:ワタミフード株式会社
- 一般投票賞:ワタミフード株式会社
- 業界賞:クロスカンパニー株式会社
- 特別賞:国立大学法人東北大学
- 教育的指導賞:株式会社ベネッセコーポレーション
2013年のブラック企業大賞と一般投票賞にはワタミフード株式会社が選ばれました。ワタミフードは従業員を過労に追い込み受賞しました。業界賞にはクロスカンパニー株式会社が選ばれ、特別賞には国立大学法人東北大学が、教育的指導賞には株式会社ベネッセコーポレーションが選ばれました。
2013年のノミネート企業一覧
- 株式会社フジオフードシステム
- 株式会社エービーシー・マート
2013年のノミネート企業として選ばれたのは、株式会社フジオフードシステムと株式会社エービーシー・マートです。
2012年の受賞企業一覧
- ブラック企業大賞:株式会社エーセーバイオサイエンス
- 特別賞:株式会社旭化成
- 一般投票賞:株式会社日立製作所
- ワースト 子会社:株式会社JFEスチール
2012年のブラック企業大賞には株式会社エーセーバイオサイエンスが選ばれました。特別賞には株式会社旭化成が選ばれ、一般投票賞には株式会社日立製作所が、ワースト子会社には株式会社JFEスチールが選ばれました。
労働環境改善の取り組み

労働環境の改善は、ブラック企業を根絶し、労働者の健康と働き方を保護するために非常に重要な取り組みです。
日本政府は、「働き方改革」を推進することにより、労働環境の改善に努めています。以下に、具体的な労働環境改善の取り組みを紹介します。
長時間労働削減推進本部の発足
「長時間労働削減推進本部」は、2014年に設立された組織であり、厚生労働大臣が本部長を務めています。この本部では、長時間労働の削減を推進するために、様々な施策を展開しています。
過重労働撲滅特別対策班の発足
「過重労働撲滅特別対策班」は、2015年に設立された組織であり、悪質な長時間労働を根絶するために設置されました。この特別対策班は、違法な長時間労働による労災や過労死を防止するための施策を進めています。
新基準の公表と企業への実態調査
2016年、厚生労働省は、違法な長時間労働による過労死を防止するための新基準を公表しました。この新基準に基づき、企業に対して実態調査を行い、違法な長時間労働の是正を求めています。違法なケースには罰則が科されるほか、企業名の公表も予定されています。
労務管理の重要性
労働環境改善には、適切な労務管理が欠かせません。企業は従業員の健康を守るために労務管理を行う必要があり、長時間労働やパワーハラスメントなどを防止する姿勢が重要です。
人事評価制度の導入
労働環境の改善には、人事評価制度の導入も効果的です。適切な人事評価制度を導入することで、過重な業務負荷を回避し、労働者のワーク・ライフ・バランスを確保することができます。
これらの労働環境改善の取り組みは、ブラック企業の撲滅と労働者の健康を保護するために非常に重要です。政府や企業は労働者の権利と福利厚生を重視し、より良い労働環境を実現するために積極的に取り組む必要があります。
まとめ
ブラック企業大賞は、ブラック企業の問題を広報し、労働環境の改善に取り組むことを目的としています。日本政府や企業自身も労働環境の改善に向けた取り組みを行っており、長時間労働の削減や過重労働の根絶などの施策が進められています。労働環境の改善は、労働者の健康と働き方を守るために非常に重要な取り組みであり、社会全体の意識向上と改善に寄与する役割を果たしています。ブラック企業大賞の活動は、ブラック企業の撲滅と安心して働ける環境の実現を目指し、多くの人々により良い労働環境を提供するための重要な取り組みです。
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